富田童子先生の「BOYS OF THE DEAD」の紹介と感想レビュー記事です。
全1巻で完結済み!
オムニバス形式の短編ですがそれぞれのお話がリンクしていて一つの作品として成立しています。
- 絵やストーリーを重視したい人
- 洋画の雰囲気が好きな人
- シリアス・ダークな作風に惹かれる人
ぬっこの書房 独自評価
エロ・濃厚度 | 2.0 |
ストーリー展開 | 5.0 |
キュン要素 | 3.0 |
お笑い要素 | 3.5 |
ラブラブ度 | 3.5 |
心情描写 | 4.0 |
キャラクターの魅力 | 4.0 |
絵の上手さ | 5.0 |

1ページ1ページをじっくり読みたくなるような美しい絵と作り込まれた世界観。性描写はほとんどありませんがちゃんと愛のあるBLです。
ゾンビものならではの雰囲気が読んでいてゾクゾクします。
ジャンル
- ゾンビ
- オムニバス
- ダーク
1巻あらすじ
ゾンBL
この物語には、
強い感染力がありますので、ご注意ください。山奥のコンテナで、ひっそり暮らすライナスとコナー。
彼らはそこで、―――人肉を食べて生きていた。
教会に忍び込んで墓を掘り返し、死者をこま切れにして持ち帰る。
ライナスがそんな重罪を繰り返すのも、すべては、愛しいコナーの命を繋ぐため。
彼を生かすためなら、他者など牛や豚に等しいと、罪を重ねていくが―――。人であれ、ゾンビであれ、極限の世界で愛を貫く者たちの物語。
吸引力の塊・富田童子の世界へ、いってらっしゃい。引用元:Amazonkindleストア
感想・レビュー
オムニバス形式の短編ですがそれぞれのお話がリンクしていて一つの作品として成立しています。
伊坂幸太郎の小説のような構成、洋画のショートムービーのような雰囲気を持った本作は1ページ目をめくったその瞬間から読み手をストーリーの中へ引き込む引力を持っています。
ゾンビが蔓延る世界で人々はどのように生きてそして死んでいくのか、ゾンビものとあってインパクトの強い本作ですが一つ一つのお話、コマ、セリフが作り込まれており、丁寧に読めば読むほど魅力を感じる作品です。
注意ポイント
ここから先、かなりネタバレになりますのでご注意ください
Scene1:William and Adam
日曜日の深夜、閉店間際のカフェに現れた2人組の奇妙な客、ウィリアムとアダム。
この冒頭でぐっと物語の中に引き込まれてしまいました。
愛する人に似ているウィリアムを安全な場所まで送り届けようとするアダムの真意を知った時、ここでは描かれていないアダムの空白の時間を想像し、切なくなりました。
ウィリアムは「アダムとの死 」を覚悟していたからこそカフェ店員に自身の物語を託したのでしょうね。
Scene2-3:Linus and Conor
人々のゾンビ化が進み、地獄のような光景が映し出されるニュース番組。
その側で今日も生きることができると喜び人肉をくらう二人の青年、ライナスとコナー。
腐敗した世界で愛するものと強く生きようとするライナスの姿にはとてつもない力強さを感じました。
明日にでも気が狂ってしまいそうな、犯した罪への罪悪感やトラウマに押しつぶされそうなライナス。
ライナスの目に映るコナーの姿は美しく、ライナスを明日へと導く唯一の希望なのだと思います。
ライナスの最期の姿、希望の光を失った彼は自ら首をくくったということなのでしょうか。
切なくも人を愛することにより得られる力強さを感じる物語でした。
Scene4-5:Me and Lawrence
湖の真ん中にポツンと立つ小屋で一人暮らすローレンスのもとにゾンビに襲われ逃げてきたレイモンド。
ローレンスの本性(ウソ)が明かされたとき、ぞくっとしましたがそれはローレンスが腐敗した世界で生きていくために必要な手段だったのだと思うと同時に切なくもありました。
小屋を‟善悪の彼岸”と呼ぶローレンス。こんな世界でなければ・・・と考えてしまいます。
そしてこの作品全体は「Me」つまり、レイモンドの手によって記録された物語。
このお話を物語りつづけるかぎりは彼らの物語は終わらないのだと、読み手である私たちに対してレイモンドが物語りつづけることを託したという形になるのでしょうか。
読めば読むほど魅力に気が付く作品なのでまだまだ私が気づいていないこともありそうですね。