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あまあまな後輩×先輩♡
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オリジナルBL小説

気になる彼の中には 第4話|BL小説

 朝、下駄箱で伊坂に会った。

「おはよ」

 いつも通りの声。

 あまりにもいつも通りで、一瞬だけ言葉が詰まる。

「……おはよ」

 なんだ、変に意識していたのは俺だけか。

 そう思った時。

 伊坂がほんの少し、はにかむように笑った。

 柔らかい笑い方。

 それだけで、張っていたものがふっと緩む。

「昨日さ、図書室で調べてたんだよ」

 なんで今それを言うのか、自分でも分からない。

「スルメのこと。でもさ、何も出てこなくて」

 伊坂がこっちを見る。

 視線が合う。

「まあ……役に立たなかったけど。お前のために動いてたんだよ」

 言ってから、ダサいなと思う。

 アピールみたいで。

 でも、引っ込められない。

「俺ぐらいのもんだよ。こんなさ──」

 お前のこと思っているのは。

 言いかけて、やめる。

 伊坂は一瞬きょとんとして、それから──

「……うん」

 嬉しそうに、頷いた。

 その顔を見た瞬間。

 胸の奥が、じわっと熱くなる。

 ──ああ、よかった。

 そう思うのに。

 同時に、引っかかる。

 こんな顔、今まで向けられたことあったか?

 まるで。

 ――好きなやつに向けるみたいな。

 俺がそう思いたいだけかもしれない。

 でも。

 伊坂の言葉がよぎる。

 ――俺じゃなくなるかもしれない。

「……なあ」

 気づけば、口が動いていた。

「今日も一緒に飯、食わない?」

 理由はある。

 試したいことがある。

 でも、それだけじゃない。

 確かめたい。

 目の前にいるのが、ちゃんと伊坂なのか。

 伊坂は少し驚いた顔をして、それからすぐ笑った。

「うん」

 迷いのない返事。

 その表情に、また胸がざわつく。

 嬉しいはずなのに。

 どこかで、警戒している自分がいる。


 昼休み。

 もうお馴染みとなった体育館倉庫。

 俺の考えはシンプルだった。

 スルメを完全に手懐ける。

 そうして、できれば伊坂から引き離す。

 それが一番現実的な解決策に思えた。

 弁当を食べ終えたあと、俺はスルメに向かって手を伸ばした。

「ほら、こい」

 触手が、すぐに反応する。

 するりと伸びてきて、手首に絡みついた。

 ぬる、とした感触。

 でももう、嫌悪はない。

 むしろ自分の言うことを聞くそれが、少しだけ可愛く思える。

「お前、ほんと懐いたな」

 軽く腕を動かすと、ついてくる。

 もっと遊んでほしいみたいに。

 吸盤が、指に触れる。

 ぴたり、と吸いつく。

 わずかに引かれて、意識がそこに持っていかれる。

「……変な感じ」

 視線を上げると、伊坂がこっちを見ていた。

 じっと。

 何かを確かめるみたいに。

「なに」

「いや……」

 伊坂が目を逸らす。その頬が少し赤い。

 そのとき。

 スルメが、もう一本触手を伸ばしてきた。

 腕の内側。

 柔らかいところをゆっくりとなぞる。

「……っ」

 思わず息が止まる。

 さっきよりはっきりと、なぞられた場所が敏感になる。

 なんでこんなに気持ちいいんだろう。

 これじゃ遊んでるってより──

 軽く振り払おうとした。

「おい、調子乗んな」

 けど、完全には振り払えない。

 そのまま、しばらく触れさせたままにしてしまう。

 伊坂が、小さく息を吐いた。

「……なんか変なもん見せられてるみたいでやだ」

「何が」

「町田とエッチしてるみたいな気分になんだもん」

 その言い方がどこか、自分のことも含んでるみたいに聞こえる。

 今朝見た夢が、頭をよぎる。

 途中で目が覚めた、あの中途半端な夢。

 伊坂のことをちゃんと見られなくなってしまう。

 ――ただでさえ、意識しまくってるのに。

「なあスルメ」

 触手が、ぴたりと止まってこちらを向く。

「伊坂が変なこと言ってくるから、ちょっと黙らせて」

 もちろん冗談のつもりだった。

 でも。

 一瞬の間もなく、触手が動いた。

「ちょ、おま……!」

 伊坂の身体が、マットに押し倒される。

 腕も、足も、絡め取られる。

 口に触手が触れて、声が途切れる。

 ――やりすぎだ。

 そこまでしろとは言ってない。
 
 そう思いながらも目が離せない。

 自分の中から出ているものに、押さえつけられている伊坂。

 逃げられない体勢。

 わずかに浮く腰。

 はだけたシャツ。

 腹の口の周りで、触手が蠢く。

 誘うみたいに、こちらへ伸びる。

 一歩。

 足が出る。

 もう一歩。

 近づく。

 ――その先を、想像する。

 喉仏が上下し、唾を飲み込む。

 でも。

「……違う」

 頭を振る。

「違う。スルメ、やめろ。……こんなことがしたいんじゃない」

 頬に触手が触れる。

「スルメ!」

 強く言う。

 その瞬間、触手が引いた。

 伊坂の身体が解放される。

 息を荒げながら、こちらを見る。

 焦点が少しだけ合っていない。

 熱を帯びた目。

「ごめん。こんなつもりじゃ――」

 言いながら、スルメを見る。

 それから、伊坂を見る。

「なあ、スルメ」

 触手が、わずかに揺れる。

「伊坂から、離れてやってくれない?」

 触手の動きがぴたりと止まる。

「お前さ、俺の言うこと聞くだろ」

 動きを止めた触手に触れる。
 説得するみたいに。

「伊坂じゃなくてもいいだろ。
 そしたらまた、俺が遊んでやるよ。こうやってさ」

 触手をゆっくりと握った。
 吸盤が、指に吸いつく。

「だから、離れてくれよ」

 少しだけ間があった。

 スルメが、ぐ、と縮こまる。

 伊坂の腹の方へ、潜り込むように。

 まるで、戻る場所を選ぶみたいに。

「……それはできないよ」

 声がした。

 伊坂の口から。

「ごめんね」

 目が合う。

 喉が詰まる。

「……なぁ、伊坂は伊坂だよな?」

 やっと、絞り出すように言った。

「……うん」

 伊坂はそう言って、視線を逸らした。

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