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あまあまな後輩×先輩♡
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オリジナルBL小説

気になる彼の中には 第2話|BL小説

 教室に戻るまでの間、俺は伊坂に質問をぶつけ続けた。

「なんで俺、そいつのこと見えんの?」

「知らないよ」

「なんで俺、そいつに好かれてんの?」

「知らない」

「ていうか今触手どうなってんの?」

「腹に巻いてる」

「どうやって?見せて」

 間髪入れずに言うと、伊坂は露骨に嫌そうな顔をした。

「……しつこい」

「気になるだろ普通」

 しばらく黙ったあと、伊坂は小さくため息をついた。

「言っとくけど、コイツの話は二人の時しかしないでくれ」

「え?」

「他のやつには見えてないって言っても、万が一があるだろ。俺だって、どうしたらいいかまだ分かってない」

 少しだけ不安の混じったような声だった。

 俺は肩をすくめる。

「じゃあ一緒に考えていこーぜ」

 軽い調子で言ったつもりだった。

 けれど、伊坂は階段の途中で足を止めた。

 数秒黙ると、ぽつりと呟いた。

「……お前でよかったよ」

 思わず顔を見る。

 伊坂は視線を逸らしたまま、階段の死角に入った。

「ちょっとだけな」

 そう言ってシャツをめくる。

 思わず息を飲んだ。

 触手が、絡みついている。

 腹から胸にかけて、ぬらりとした腕が何本も巻きついていた。

 まるで、身体ごと縛り上げているみたいに。

 白い肌には、ぽつぽつと赤い跡。

 吸盤の跡だ。

 やけに生々しくて、目が離せない。

「なんか──」

 エロい、という言葉が浮かんで、慌てて飲み込む。

「痛そうだな」

 言い直しながら、自分の顔が少し熱いのに気づく。

 伊坂は苦笑した。

「実際ちょっと痛いよ。もう慣れたけど」

 そのとき、触手がわずかに動いた。

 きゅ、と締めつけるように絡みついて、伊坂が小さく息を漏らす。

「……っ」

 一瞬歪む表情。

 それがやけに色っぽく見えて、視線を外せなかった。

「触っていいか?」

 気づけば、そんなことを口にしていた。

 そのときだった。

 上の階から、くすくすと笑い声が聞こえた。

 振り向くと、クラスメイトが数人こちらを見ている。

「お二人さん、何してんのー?」

「いいところだったのに」

「町田のエッチー!」

 好き勝手言いながら、笑って走り去っていく。

 数秒の沈黙。

 ……今の状況を整理する。

 階段の死角。

 シャツをめくってる伊坂。

 それを覗き込んで、手を伸ばしかけていた俺。

「……」

 完全にアウトだ。

 とんでもない誤解を受けたことに気づいて、慌てて伊坂を見る。

 (俺がエッチなのに関しては事実だけど)

 伊坂も俺以上に焦った顔をしていた。

「だ、大丈夫だって」

 俺は慌てて言う。

「あの様子じゃ触手のことは見えてないみたいだし、俺が誤解解くから」


 あの後は散々だった。

「腹の音がうるさかったから見てただけ」

 という苦しい言い訳は、余計に怪しまれた気がする。

 弁当も食べ損ねて、腹が鳴るのは俺の方だった。

 しかも伊坂には思いっきり睨まれるし。

 本当のことを言えないって、思ってたより面倒だ。

 ──そして今日の昼休み。

 伊坂はやっぱり体育館倉庫に行くらしい。

 ついていくと言ったら断られた。

「昨日みたいなことがあるかもしれないから」

 というのが理由だそうだ。

 それでも、昼食代を半分出すと言ったらあっさり折れた。

 これは断られることを想定して、財布に多めに入れてきた俺の戦略勝ちだ。

 パンやおにぎりを買い込み、二人で倉庫へ向かう。

 中に入ると、伊坂は俺に背を向けた。

「なんだよ。もう知ってる仲だし、普通に食おうぜ」

「……食うとこ見られるのは、普通に恥ずかしいんだよ」

 少し肩をすくめる。

「たぶんコイツもそう思ってる」

「へぇ。意外と繊細なんだな」

 そう言いながら弁当を開く。

 シャツの中で、何かがもぞもぞ動いているのが分かる。

 見えない分、勝手に想像が膨らむ。

 落ち着かなくて、視線を弁当に落とした。

「伊坂は食べないの?」

「俺は……コイツが食べたら腹いっぱいになるから」

「え?」

「だから最近、飲み物しか口にしてない」

「それ、虚しくね?」

 弁当に入っていたイチゴを箸でつまむ。

「これやるよ。ほとんど水分だから──」

 言いかけた、そのとき。

 ぬるり、と。

 一本の触手が伊坂のシャツの隙間から伸びてきた。

 迷いなく、まっすぐ俺の方へ向かってくる。

「いや、お前にじゃなくて伊坂にだって」

 言い終わる前に、腕に巻きつかれる。

 びく、と身体が強張る。

 触手はイチゴを絡め取り、そのまま持ち上げた。

 伊坂がそれを見上げ、口を開く。

 ぐしゃ、と潰れる果実。

 赤い汁がとろりと落ちる。

 それを受け止めて、喉が動く。

 ごくん。

 口元についた赤を指で拭い、舐める。

 その仕草に、息が詰まった。

 妙に色っぽい。

 なのに、どこか自分の意思じゃない、操られているみたいで。

 ぞわ、と背中が粟立つ。

「美味しい」

 低く、甘い響き。

 その光景に目を奪われていた、次の瞬間。

 触手が、頬に触れた。

 吸盤が、ぴたりと吸いつく。

「……!」

 反射的に、手で払いのけようとする。

 けど、ほんの一瞬だけ、動きが遅れた。

 その隙に、もう一本が腕に絡む。

 じわ、と締めつけられる感覚。

 ぞく、とした。

「待っ──」

「うぁ!」

 伊坂の短い悲鳴と同時に、触手が一斉に動いた。

 身体が壁に押しつけられる。

 逃げようとして、足がもつれる。

 触手が服の上から肌をなぞる。

 くすぐったい。

 ――だけじゃない。

 触れられたところだけ、妙に感覚が敏感になる。

「やば……」

 思わず声が漏れる。

 すぐに口を閉じる。

 何言ってんだ、俺。

「やめろ……!」

 伊坂が苦しそうに声を出す。

 見れば、触手を俺から引き離そうと引っ張っている。

 けれど、止めきれていない。

 その表情が、少しだけ歪んでいた。

 俺が、止めるしかない。

「これ以上やったら──」

 言いかけて、息を吸う。

「お前のこと嫌いになる」

 はっきりと言った。

 その言葉を選んだのは咄嗟のことだった。

 けど、俺にしてはナイス判断だったと思う。

 その瞬間。

 触手がぴたりと止まった。

 そして、ゆっくりと離れていった。

 身体から力が抜けて、その場にへたり込んだ。

 心臓が、うるさいくらい鳴っている。

 横を見ると、伊坂も同じようにへたり込んでいた。

「大丈夫か?」

「……そう見えるかよ」

 少し荒い声。
 自分でもその声に驚いたように伊坂は口をつぐむ。

 それから小さく言い直した。

「……いや、大丈夫」

 そしてぼそりと呟く。

「町田といると、コイツが暴走するから嫌だ……」

 その言葉が胸に引っかかる。

 俺は、わざと笑った。

「でもさ、止まっただろ」

 伊坂がこっちを見る。

「俺の言葉で」

 確証はない。

 でも――確信はあった。

「俺ならコイツを抑えられる」

 触手が触れた場所を無意識に触っていた。

 この関係を、手放したくない。

 伊坂はやっと、小さく笑った。

「……お前、タフだな」

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